お見合い相手は冷血上司!?
「もちろんですよ! 明日はお休みなので、好きなだけ使ってやってください」

 驚きに打たれて固まってしまった私の身体は、簡単に差し出される。

「じゃあな、亜子。ちゃんと看病するんだぞ。じゃあ晴人さん、また今度。お大事にされてください」

 私の伸ばす手も虚しく、父は颯爽と行ってしまった。取り残された私は、脱力してガクリと項垂れる。

「本当に……強引な父ですみません。私も帰るので、課長はお家でゆっくりされてください」

 苦笑いを浮かべると、彼は私の肩を抱き寄せた。
 驚いて勢い良く顔を上げると、彼はニヤリと凄みのある笑顔を見せる。
 嫌な予感が背筋に冷たく垂れて、後ずさりをしようとも、回された腕がそうはさせてくれない。

「か、課長……?」

「お父さんのお言葉に甘えることにした」

 耳元で囁かれる、淡く低い声。
 しかし、いつもより熱を帯びた腕を振り解くことは出来なくて、私は頭が煮詰まりそうな葛藤の末、彼の車に乗り込んだ。
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