お見合い相手は冷血上司!?
「せめて絨毯の上に座れ」

 緊張して絨毯の外側に座っていた私は、カバンと袋を持っていかれて、追いかけるように大きな黒のL字型のソファの前で足を止める。
 ズッ、と鼻を啜る音が響き隣を見上げると、彼の頬の熱はどんどん増しているように見えた。

「キッチンお借りしてもいいですか? 早く薬を飲んだ方がいいと思うので、何か簡単に食べられるもの作ってきます。課長は、休んできてください」

「あぁ。悪いが、そうさせてもらう。キッチンにあるものは何でも好きに使ってくれて構わない。……一番奥の部屋にいる」

 虚ろな目をこちらに向ける彼はすっかり衰弱していて、少し素直だ。
 濃紺の背中が扉の向こうに消えるのを見届けると、私はキッチンで買ってきた材料を広げる。
 広いアイランドキッチンには調味料がそれなりに並んでいて、必要最低限の調理器具もあった。
 料理はするんだ……。
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