お見合い相手は冷血上司!?
 リビングの一番奥にある黒い扉を見つめながら、一度大きく深呼吸をする。
 意を決して扉を二回叩くけれど、返答はない。

 あの熱だし、やっぱり寝てるよね。

 勝手に開けていいものかと悩んだけれど、課長も一番奥の部屋にいるって言っていたし……何より薬を飲んでもらわないと、私がここに来た意味はないも同然だ。

「失礼します……」

 ゆっくりと扉を開ける。
 起きているつもりだったのか、部屋の電気はついたままだ。
 ……ここは寝室、だよね?

 足を踏み入れると、私の心臓は、破裂しそうな勢いでばくばくと脈打っていた。
 
 リビングと同じく余計なものがないおかげで、視界にはすぐにベッドが飛び込んでくる。
 徐に近づくと、そのベッドからは、スー……と寝息のような声が聞こえてきた。
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