お見合い相手は冷血上司!?
「ちょっと課長、起きてください。私、もう帰りますよ」

「このまま泊まっていけ。明日は休みだろう」

 目を閉じたまま腕に力を込めた彼は、私の髪に指を絡め、それをするりと滑らせていく。
 すぐに頬に上る熱を見られたくなくて顔を伏せると、胸が激しく波立っていくのを感じた。

「か、課長、離してください」

 もう一度腕から抜け出そうと試みるけれど、やはり固く抱き締めるそれからは抜け出せない。
 このまま朝までなんて、いくら課長が風邪でも……私は首を大きく左右に振った。

「おい、うるさいぞ抱き枕」

 目を瞑ったままの彼は、口元を柔らかく綻ばせる。

「課長……!」

「不思議だ。お前を抱いてると、安心する」

 彼は今にも眠ってしまいそうな、遠い声で呟いた。
 思わず、胸が窮屈に締め付けられる。
 そんなことを言うのはズルイ。風邪をひいた時の課長は、子供のように甘えん坊だ。
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