お見合い相手は冷血上司!?
「か、課長、かなりの急用じゃないんですか? 出た方がいいですよ」

「そのうち諦めるだろ。出なくていい」

「でも……」

 しかし全く諦める様子のないそれは、苛立ちを含めたようにだんだんと速度を上げていった。
 頑なに無視を決め込んでいた課長も、ついにチッと舌打ちをしながら起き上がる。

「誰だ。……ったく。ちょっとここで待ってろ」

 寝室を出ていった彼の眉間には、くっきりと黒瀬川が浮き上がっていた。
 いつにも増した迫力で、思わずベッドの上に正座して「はい……」と背筋を伸ばす。

「私、何やってるんだろう……」

 ベッドから降りてスーツのスカートのシワを整えると、思わず長い息が漏れた。
 課長に抱き締められると、いつも流されてしまう。
 自分の思いが分からないのに、その熱にほだされて寄りかかってばかりだ。

 頭を垂れていると、遠くの方で、課長の怒鳴り声らしきものが聞こえてくる。
 しつこい勧誘か何かかな? でも、オートロックだったはずだし……大丈夫だよね?
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