お見合い相手は冷血上司!?
「――課長……この会社を辞めるらしい。今回の出張が終わったらそのままもう、ここには来ないんだって」
頭が白く溶け落ちるような衝撃が走り、彼女がまだ何かを話しているようだったけれど、その声は聞こえない。
驚きの言葉を出そうにも、喉が詰まったように何も話すことが出来なかった。
「あ、亜子……? 大丈夫?」
心配そうにこちらを覗き込む桃の顔を見て必死に平然を装おうとするけれど、心臓が激しく動悸して、眩暈がするように目の前が回る。
あれ? どうすれば笑えるのか分からない……。
「亜子、課長から何か聞いてる?」
「ううん。何も」
ようやく絞り出した声は、ひどく震えていた。
悲しげに顔を歪めた桃は、それ以上何も聞かず、私を抱き締める。
こうなることを、どこかで分かっていたような気がした。
それでも何も聞けなかったのは、私がまた――逃げたからだ。