お見合い相手は冷血上司!?
仕事が終わると、私はすぐにビルの前でタクシーを拾い課長の家へと向かった。
一度行ったっきりなので場所は明確ではないけれど、じっとしてはいられなかった。
「すみません、ここで大丈夫です」
あの日も目に入ったコンビニの前で降りる。
ここから、そんなに離れていなかったはずだ。
コツ、コツ、とヒールの踵が道路を蹴る音が響き、近付くにつれ、恐怖心に襲われる。
『鈴原、俺の嫁になれ』
『――そんなもの、お前が好きだからに決まってだろう。バカが』
『さっさと諦めて、俺を好きになれ。……幸せにしてやる』
課長の声が何度も頭の中を木霊する度に、抑えきれないほどの胸の高鳴りが熱となって身を焦がす。
思い返せば返すほど、対面するのが怖くなった。
温かい風が髪を舞い上げて、先を追うように顔を上げると、そこには今日も空に向かってそびえ立つ高層マンションが見える。
止まった足は、情けないほどに震えた。
一度行ったっきりなので場所は明確ではないけれど、じっとしてはいられなかった。
「すみません、ここで大丈夫です」
あの日も目に入ったコンビニの前で降りる。
ここから、そんなに離れていなかったはずだ。
コツ、コツ、とヒールの踵が道路を蹴る音が響き、近付くにつれ、恐怖心に襲われる。
『鈴原、俺の嫁になれ』
『――そんなもの、お前が好きだからに決まってだろう。バカが』
『さっさと諦めて、俺を好きになれ。……幸せにしてやる』
課長の声が何度も頭の中を木霊する度に、抑えきれないほどの胸の高鳴りが熱となって身を焦がす。
思い返せば返すほど、対面するのが怖くなった。
温かい風が髪を舞い上げて、先を追うように顔を上げると、そこには今日も空に向かってそびえ立つ高層マンションが見える。
止まった足は、情けないほどに震えた。