お見合い相手は冷血上司!?
 オートロックのインターホンを押したけれど応答はなく、木津主任に聞いた彼の電話番号は、何度も数字を並べたけれど、最後のボタンを押すことは出来なかった。

 明日の出張に向けての準備日だと言っても、ここに帰ってくるのだろうか? 分からないけれど、今はただ待つしかない。

 しかし、日が沈み、景色が闇に溶けても、課長は現れなかった。
 空を見上げると、月が雲に隠れながらひっそりと照らう。

 ……もう、帰ろう。

 諦めて足を進めると、その瞬間、しまい込んでいた熱い思いが堰を切って溢れ出た。
 この痛いほどに胸を焦がす想いの名前は、知っている。

 ――恋という、甘く、切ない感情だ。

 私、課長のことが好きなんだ。

 自覚した途端、それは波のように私を包む。

 課長に……会いたい。
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