お見合い相手は冷血上司!?
「遅かったわね。残業? お疲れ様」
家に帰ると、パジャマ姿の母が心配そうに出迎えてくれた。
「連絡もしないでごめんね」
苦い笑みを零すと、母は一瞬上げた眉を緩やかに下げて私を見つめる。
「亜子、何かあった?」
思わず肩が跳ねたけれど、私はそっと口元を綻ばせた。
「ううん。何も」
「おっ、亜子! おかえり。晴人さんが遊びに来るのいつがいいかな? 忙しいだろうから、お前から予定を聞いといてくれ」
リビングから飛び出してきた父が、腕を組み嬉しそうに首を傾げた。
靴を脱ぎながら「聞いておくね」と返すと、父は顔をぐしゃりと歪めて笑う。
その姿を見て、胸に鈍い痛みが走った。
二階にある自室に入り、崩れるように座り込むと、ようやく長い息をつくことが出来る。
自覚してしまえば、この熱からはもう二度と逃れることが出来くて、不安と恋しさが私の胸をひどく締め付けた。