お見合い相手は冷血上司!?
「……好きです」

 想いを口から出すと、愛しくて涙が出た。

「課長のことが好きなんです! いつからか、そんなのは分かりません。でも、最初は怖くて苦手だったのに、課長の優しさに、温かさに触れて、何より……こんな私にまた恋をさせてくれました。
 今更……投げ出さないでください。こんなに好きにさせて、放り出さないでください」

 溢れ出した想いと共に、涙は堰を切ったように次々と溢れ出す。

 好きで、好きで――

 この思いを告げる時は、無条件にあなたの腕に抱き締めてもらえると思っていた。



「すまない。……俺のことは、一生許すな」

 絞り出したような低い声が、響く足音と共に遠ざかっていく。

 私は足元から崩れ落ちて、子供のように顔を歪めて泣いた。しかし、温かな手が、それを拭ってくれることはもうない。

 いつの間にか黄に色を変えた朝の光に照らされながら、私の恋は、あっけなく終わってしまった。
< 159 / 195 >

この作品をシェア

pagetop