お見合い相手は冷血上司!?
「はい、もちろん大丈夫ですよ」
クリエイティブ部から受け取ったA4サイズの封筒を抱え廊下を歩いていると、視線の先には、顔を顰めた桃が立っている。
「サボって何してるの? 怒られるよ」
横を通り過ぎると、彼女は私の肩を取り、心配そうに顔を覗き込んだ。
「……空回りっていうか、空元気?」
「何よ。そんなことないわよ」
笑顔で返すけれど、彼女は再び顔を顰め、かと思うと悲しげに眉を下げる。
「早く忘れたいっていうのも分かるけど、最近の亜子、見ててつらいの。もっと落ち込んで、言いたいこと……言っていいんだからね?」
課長と最後に会ってから、早いもので一ヶ月が経った。
しかし、桃以外誰も私と課長のことは知らないので、あの日私が真っ赤に腫れた目で働いていても、チラリと様子を気にする者はいても、課長と結びつける者はいなかった。
桃だけが、私の顔を見た途端今にも泣き出しそうなほど顔を歪めた。