お見合い相手は冷血上司!?
「もう十分泣いたよ。それに、忘れたくないの。私は課長のおかげで救われたから。二度と会えないとしても、それは変わらないよ」

「亜子……」

 桃は課長の話をすると、すぐに目の端に涙を滲ませる。
 「もう、また」と笑うと、彼女は口を思い切りへの字に曲げて涙を堪えた。

 これでは、せっかくの美人も台無しだ。

 しかし、彼女が自分のことのように悲しんでくれるから、私もあれ以来泣かないで済んでいるのだと思う。

「それにね、私も、もう泣き寝入りしないことにしたの」

「え? どういうこと?」

 今度はその大きな目を丸めた彼女は、久しぶりに活力を蘇らせたかのように私に詰め寄った。

「ちゃんと、全てを知りたい。課長が本当に私が邪魔で二度と会いたくないなら、もう会わない。けれどもし、そうじゃないなら……私は諦めないことにした」

 私も、覚悟を決めた。
 二度と後悔をしないように、最後まで諦めたくない。
 すると、目を輝かせついに涙を流した桃が胸に飛び込んできて、私たちは仲良く廊下に転がった。
 
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