お見合い相手は冷血上司!?
――「お待たせ亜子さん。やっぱり、また会うことになったでしょ?」
約束の時間より十五分過ぎてから現れた男性。私が席を立って頭を下げると、彼は「そんなのいいよいいよ」と私の向かいの席に腰掛けた。
「あ、いつものやつ。今日はロックで」
案内してきた店員に手馴れた様子で注文しているところを見ると、ここは彼の行きつけの店のようだ。
この場所を指定してきたのも彼だったから、納得だけれど。
会員制の個室ラウンジなんて初めてで、その重厚な扉が閉められると、まるで金庫の中にいるようで思わず背筋が伸びた。
「隼人さん……。今日はお忙しいところ、すみません」
再び軽く頭を下げると、隼人さんは垂れた髪を綺麗に掬いあげて耳に掛ける。
「俺が呼び出したんだから、何で亜子さんが謝るの? こちらこそ来てくれてありがとう」
彼は困ったように微笑むと、目の前のおしぼりで手を拭いていた。