お見合い相手は冷血上司!?
「あいつが君を手放した理由……知りたい? 亜子さんにとって、その答えが必ずしもいいものになるかは分からないけれど」

 スッと鋭く向けられた視線に一度深呼吸をすると、ゆっくりと頷いた。
 すると口元を綻ばせた彼は、嬉しそうに薄笑みを浮かべる。

 ……見れば見るほど、彼は課長とよく似ていた。正面で見ているのが苦しくなるほど、彼の姿から、課長を思い出してしまう。

「お願いします。全部、知りたいんです」

 どんな答えも受け止めると決めた。
 もし、これを聞いて課長の想いを少しでも分かつことが出来るなら……。

「君は、今の仕事が好き?」

 彼の口から出た言葉は、私の予想外のものだった。
 「え?」と思わず短い声を出すけれど、真っ直ぐにこちらを見る彼の目は微塵も揺らいではいなくて、私の顔にもすぐに緊張が戻る。
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