お見合い相手は冷血上司!?
「好きです。今の仕事に就くのが幼い頃からの夢で、実際働いて大変だと思うことも多いですけど、日々感じる思いは今も変わっていません」

 私の返答を聞くと、彼は「そう」と悲しげに笑みを浮かべた。
 凍ったような沈黙の間に身を沈める。

 どれぐらいそうしていたのだろうか。

 彼は私のグラスの中の氷が音を立てたのを合図にしたように、固く閉じていた口を再び開いた。

「その仕事を捨てることになっても、晴人と一緒にいたいと思う? ……その夢を諦めても、君は晴人を好きでいられる?」

 低く掠れた声は、より強く課長を感じさせる。
 彼の言葉に、心が激しくどよめくのを感じた。

「……どういうことですか?」

「あぁでも、聞けばすっぱりと諦めがつくなら、それもありか……」

 独り言のように呟き自嘲気味に笑った彼は、覚悟を決めたように言葉を続けた。
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