お見合い相手は冷血上司!?
「正直俺は、晴人がどうなろうと知ったこっちゃないって思ってたんだ。ずっと何でも出来るあいつが羨ましくて、憎んだこともあったし。
 でも昔、あいつも同じようなこと言ってたんだ。『今の仕事は俺の夢だから、出来るところまでやらせて欲しい』って。
 その時は……俺が一番にしていてもなれなかった跡継ぎを放り出してまで、やりたいことなのか? って心底腹立たしかったけど、今ならそれが俺が跡継ぎになりたかったのと同じ気持ちだって分かる。
 あとにも先にも、晴人が親父に頭を下げてまで何かをお願いしたのは、あの時が初めてだったし。
 ずっと劣等感で見ないフリをしてきたけど、結局は俺の力不足で、それがあいつの夢を潰したんだ。
 だからこれは、罪滅ぼしかな……」

 眉を下げた彼は、苦い笑みを浮かべた。

「ありがとうございます。隼人さん……」

「だから、これは俺の自己満足なんだって」

 そう言うと、ドリンクメニューに視線を落とした彼。
 その表情は見えなかったけれど、きっと、優しい笑みを浮かべていると思った。
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