お見合い相手は冷血上司!?
 ロビーへ入ると、彼の手は自然と離れた。

 もう十時を回るというのに、その場所はたくさんの人で溢れている。
 いつ来ても、よそ見をしてしまえばどちらが前かも分からなくなってしまいそうな広さだ。

 何本もトンネルのような通路が伸びていて、時折一気に人が増える。


「晴人が……今日、フロリダへ行くんだ」

 彼の乱暴に絞り出したような言葉に、私は驚愕のあまり膝からガクリと地面に崩れ落ちた。

 フロリダ……? 誰が?

 彼の一連の様子から、旅行や出張でないことは明らかで、その血が滲みそうなほど唇を噛み締めている姿を見て、それが意味する答えを嫌でも理解してしまう。

「亜子さん早く! このままじゃ、すれ違ったまま会えなくなるかもしれない!!」

 降ってきた言葉に、血潮が逆流する思いで走り出した。
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