お見合い相手は冷血上司!?
 いくら言葉を重ねても言葉にならない焦燥が、頭の中でギリギリと軋みまわる。

 フロリダ行きの搭乗口にいる人は数えられるほどで、順番に全員の姿を確認していくけれど、誰も彼とは重ならなかった。

 間に合わなかった……?

 再び膝から崩れ落ち、両手を床につく。
 こめかみに滲む汗が、涙のようにポトリと床に落ちた。

「課長……」

 言葉にすると、涙が溢れそうになる。
 二度と会えないなんて、私にはとてもじゃないが耐えられそうになかった。

 会いたい。もしもこれが最後になるとしても、もう一度顔を見て、想いを伝えられたなら……。

 その時、ふわりと身体が舞い、地面に足がつく。すると驚くひまもなく、お腹に回された腕は私を勢い良く引き寄せた。



「――何をしてる」

 低い声が降ってきて、それを辿るようにゆっくりと顔を上げる。
 するとそこには、顔を顰め戸惑いの表情を浮かべた課長が立っていた。
 その顔を見た瞬間、私は胸を締め付ける悲しみにも似た幸福感に満たされて、急激に目頭に込み上げる熱にギュッと顔を歪める。
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