お見合い相手は冷血上司!?
 叫びたいほどに心が震えても、上手く言葉に出来ない。

「よ、よ……かった……」

 目の前で顔を見られて、心からそう思った。
 身体を捻り彼の首にしがみつくと、彼は困ったように息をついては、私の腰にそっと手を回す。

「お前……どうしてここにいるんだ?」

 彼は不思議そうに問うけれど、しばらくして、「あいつか……」と自己完結した。
 そして涙を止められない私をゆっくり引き剥がすと、自身の指でその涙を拭う。

「課長、いつ帰ってくるんですか?」

 核心をついた質問に、彼は薄らと目を細めた。少し考えたように沈黙を決めるけれど、その口は徐に開く。

「……さぁな。三年か、四年か、それ以上か。何せ進出したてのところへ行くんだ、俺ですら分からん。父も落ち着いた。とりあえず日本は、父と隼人に任せられるんだ」

 傍らに置いたスーツケースの持ち手に手を掛ける彼は、侘しい笑みを浮かべた。
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