お見合い相手は冷血上司!?
「私は、課長に守ってもらわなくても大丈夫です。夢は、どこにいても追える。
 でも……人は違う。私は、後悔したくありません! 課長と離れて、二度と会えなくなったら……きっと一生後悔します。
 私と結婚するって決めたなら、最後まで私を逃がさないでください!」

 彼の表情は、微かにも緩まない。

 焦点が定まらないようにこちらを見つめる目は、流れる最後の搭乗を知らせるアナウンスに、ハッと意識を覚醒させたように動いた。

 スーツケースを手に、彼はくるりと私に背を向ける。

 遠ざかろうとするその腕を、勢い良く引いた。バランスを崩して倒れそうになる彼の頬を、両手で引き寄せる。
 近づいていくその距離が、まるでスローモーションのように感じられた。


「三回もキスして、私のことが忘れられますか?」

 ――重ねた唇は、きっと震えていたと思う。
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