お見合い相手は冷血上司!?
 私と父は、分かりやすいようにと大きな柱の側にある席で相手方が来るのを待つことにした。

 座った途端、お尻が飲み込まれるんじゃないかと思うほどフカフカなソファーの座り心地に驚く。
 父も同じか、ふいに視線が絡むと、互いに引きつった笑みを浮かべた。

「……お父さん、ちょっとお手洗いに行ってくる」

「あぁ。もういらっしゃるだろうから、早く戻るんだぞ」

 対面の時が迫ってきたかと思うと、今更ながら緊張してくる。お手洗いに行きたいわけじゃないけれど、静かな場所で深呼吸でもしたい気分だった。

 しかし、さすが日本屈指の高級ホテル、ホテル・ソウマ。お手洗いですらキラキラと光り輝いていて、至るところに置いてある高そうな花瓶や芸術品に、結局安息など出来るはずもなかった。

 手だけ洗って、戻ろう……。
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