お見合い相手は冷血上司!?
 ラウンジに戻ると、父が立ち上がってお辞儀している姿が目に入った。
 ぎこちない笑顔を浮かべている父の前には、スーツ姿の男性が二人。背を向けているけれど、片手を上げながら父と話しているのが、恐らく仲人を務めてくれるという相馬会長だろう。

 じゃあその隣にいる男性が……我が儘ご子息というわけか。男性は後ろ姿を見ていてもわかるほど、すらっと背が高くスタイルが良い。

 男性を見た父の表情が、キラキラと輝いているのが離れていてもわかった。

「あ、亜子! 早くこちらに来なさい!」

 ゆっくり近づいていた私を見つけた父が、早く、と手招きをする。
 一度大きく深呼吸をして、意を決した私は静かに駆け寄った。

「お待たせしてしまい申し訳ございませんでした」

 父の隣に駆け寄り、深々と頭を下げる。
 すると、コツ、踵が床を高い叩く音が響いて、ふわりと爽やかな香りが鼻腔を擽った。

 この香り……どこかで。
 すぐに追ってきた甘い香りに、私は勢い良く顔を上げた。
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