お見合い相手は冷血上司!?
「ただいま戻りました」

 ――無表情でこちらを見つめる上司、黒瀬課長の姿が。

「課長。お、お疲れ様です……」

 彼は手に持っていたカバンと黒のスプリングコートを一番前の一人離れたデスクに置くと、私と木津主任に視線を流す。

「あぁ、お疲れ様」

 先ほど背中に感じたものと同じ、そのスッと刺さる氷のような冷ややかな視線に、身体は無条件にビクリと跳ねた。

「木津さん。オフィスで踊るのもどうかと思いますが、特にその手……。今は合わせてニコニコしていても、後でセクハラとか騒いで訴えられたら面倒なので、あまりお勧め出来ない行動ですね」

 な、訴えたりなんて……!
 その言葉が喉元まで出かかったけれど、冷静さを呼び戻し丁寧に飲み込む。

 それに私はともかく、いくら木津主任が自分の部下だとしても、自分より一回り近く年上の人にあの言い方は失礼だと思う。

 ……相手がいくら、木津主任でも。
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