お見合い相手は冷血上司!?
「凄いわね。私、親に無理矢理お見合いさせられてる人、実際に見たの初めてだわ。じゃあなに、もう断っちゃったの?」

「それが……断ろうとしたんだけど、相手が強敵で。それにお父さんが相手の人をひどく気に入っちゃって、もう問題は山積みなの」

「強敵? ねぇ、見た目は? イケメン!?」

 子犬のようにキラキラと目を輝かせ始める彼女は、机に手をついて前のめりになる。
 すっかり好奇心に軍配が上がってしまったようだ。

「イケメンっていうか……『端正な顔立ちで』っていう感じの方かな」

「……何でそんなにかしこまってるの?」

「それには、触れないで」

 項垂れた私を見て、彼女は『とりあえずボロネーゼ食べな』と笑顔でフォークとナイフを差し出してくれる。
 パサつきかけてしまったそれを一口食べると、冷めていても変わらずひき肉がジューシーなソースは絶品で、心が和んだ。
< 60 / 195 >

この作品をシェア

pagetop