お見合い相手は冷血上司!?
第三話 冷血上司と秘密の空で
――「鈴原」
エントランスに響く、凛とした声。
定時を一時間ほど回り、無事早めに仕事を終わらせることが出来た私は、まだ月曜日にも関わらず疲労感でいっぱいの身体を休めようと早々にオフィスを出た。
残っていた人に挨拶を済ませ、会議が終わってから外回りに出ている課長がまだ戻ってきていないのを確認して、安堵に胸を撫で下ろしていたというのに。
「お、お疲れ様です」
どうして、会ってしまうんだ。
ポーン、と軽快な音がして、一階を押したエレベーターの扉が開く。同乗していた数人が降りてから続いて降りた私は、目の前に現れた彼を見て、心底自分のタイミングの悪さを呪った。
「今帰りか」
「はい。お先に失礼します」
軽く会釈をして、エントランスの出口へ向かい大きく一歩を踏み出したはずだったのに。
突如掴まれた腕にバランスを崩し、すぐに彼の目の前へと逆戻りした。肩を支える力強い腕の存在に気付き、跳ねるように距離を取る。