お見合い相手は冷血上司!?
「俺も今日は直帰だ。ちょっと来い」

 私の返事も待たず、出口に向かい踵を返そうとする課長。

「えっ? でも、用があるから帰ってこられたんですよね?」

 ピタリと足を止めて振り返った彼は、不満気に眉を顰めた。

「まだ時間が早いから、先に進めておける仕事をやっておこうと思っただけだ」

「じゃあそれを進められた方が……」

 それに来いって、一体どこへ行くつもりなの?

「いいから、黙ってついて来い」

 迫力で彼に敵うはずもなく、諦めて後をついて行く。
 すると、エントランスのど真ん中に構える綺麗な受付嬢の女性や、チラチラとこちらを見る女性社員たちの視線に気付いた。
 複数の企業が集まるオフィスビルなこともあって、その視線は他社の女性のものまで集まっていることに、改めて課長の人気ぶりに驚かされながら、出来るだけ彼の影に隠れるようにして早足に出口へと向かった。
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