お見合い相手は冷血上司!?
 どこへ行くんですか? ともう一度聞きたかったけれど、それを許さないように、車はスピードを上げながらオレンジから藍に変わる景色を走る。
 私はすれ違う反対車線の車のヘッドライトを順番に見つめながら、時折流れる窓の外を眺めているので精一杯だった。

「少しかかる。眠くなったら、好きに寝てろ」

 十分ほど走ったところでようやく口を開いた課長は、それだけ告げると、また口を閉ざしてしまう。
 高速道路の乗り口を通過した車は、唸り声のような音を立ててさらにスピードを増した。

 音楽もない車内では、息遣いの音一つ届いてしまいそうで、呼吸をしていることにすら意識が回る。
 「はい」と返したものの、この緊迫感の中では、眠気など到底無縁だ。

 早く着けばいいのにと思いながら、私は窓ガラスにそっと頭を預けた。
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