お見合い相手は冷血上司!?

 ――もう一年半ほど前、私は、当時まだ建設途中だったこの『プラネタリウム』のプロモーションの一部に関わっていた。

 大学の時から六年近く交際していた恋人の慎二は、大学でも『天文研究会』に所属するほど天体観測が好きで、このプラネタリウムが完成するのを、私も、彼も、とても楽しみにしていた。

『亜子。俺と……け、結婚してくれないか!?』

 ちょうどその半年ほど前に、空気の綺麗な星空の下でプロポーズされて、婚約も済ませ、慎二と仲の良かった私の両親もとても喜んでいたのを覚えている。

『亜子! 慎二! 本当におめでとう!』

 大学で知り合い、大学生活四年間のほとんどを一緒に過ごした親友の鞠亜(まりあ)も自分のことのように喜んでくれていた。

 そしてこのプラネタリウムもいよいよ完成間近といった頃、私は偶然街で鞠亜の姿を見つけた。
 その表情は幸福感に満ち溢れていて、そんな彼女に愛おしそうに寄り添っていたのは、私の恋人の慎二だった。

 正直その時は何が起きたのか分からず、ただ間違いなく確信したのは、幸せの絶頂にいると思っていた自分は、恋人も、親友も、同時に失うことになったということだけだった。
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