お見合い相手は冷血上司!?
 この空は、私をひどく惨めにする。
 完成した広告パンフレットやCMを見つめ、灰色にも見えたそれらは、鮮やかに輝くほど、何度も私の心を抉(えぐ)った。

「目を逸らさず、ちゃんと見ろ。逃げないで、全てを受け止めて、思うままに吐き出せばいい。泣くのは恥じゃない。立ち止まって見ないフリをしている方が、よほど恥だ」

 冷たくも聞こえる口調が熱く胸に染みるのは、きっと強く握り締められた手のひらから伝わる熱のせい。

「……ここでは誰も、お前のことなど見ていない」

 あの日から、一度も泣けなかった。

 幸せそうな二人の姿が頭をチラつくのに、泣きじゃくる鞠亜を、何度も床に額を付ける慎二を、許してあげられない自分が悪者のように感じて。
 二人が憎いはずなのに、私が一番嫌いになったのは――何も言えない自分だった。

 普段は明るく温厚な父が顔を真っ赤にさせて黙り込み、母は何も言わず抱きしめてくれた。
 母の手が少し震えていて、二人を思うと、泣くことが出来なかった。

 あの日からずっと、心には解けない鍵をかけた。
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