お見合い相手は冷血上司!?


「課長……。本当にすみませんでした」

「だから、もういいと何度も言ってるだろう」

「でも……」

 結局上映が終わるまで泣いた私の目と鼻は、既に真っ赤に腫れていて、ジンジンと痛んでいる。

 他のお客さんたちが星座の話をしながら満足気に出ていく中、私は涙でぐちゃぐちゃになった顔を伏せて出るのを躊躇っていたのだけれど、課長が頭から豪快にジャケットを着せてくれたおかげで無事館内を後にすることが出来た。

 しかし、車で広げた彼のジャケットは、私の涙とメイクで目も当てられないほどに汚れてしまっていて、とてもじゃないが着られる状態ではない。
 これは、クリーニングでも落ちるかどうか……。

「すみません。後日必ずお返しします」

「ジャケットが涙と鼻水だらけになったぐらいでなんだ。別に構わない」

「鼻水は付けてません!! ……た、多分ですが」

 勢い良く顔を上げて反論したものの、バックミラーでチラリと見た顔のことを思い出し慌てて顔を伏せた。
 すると、クスッと息を吐くような、大人びた笑い声が響く。
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