お見合い相手は冷血上司!?
「課長。今日は、本当にありがとうございました」

 出来る限り向き直って、深々と頭を下げる。
 課長が連れてきてくれていなければ、私は一人でここへ来ることはなかった。
 きっとこれからもずっと見ないフリをして、自分の心に鍵をかけたままだったと思う。

「本当にありがとうございます。課長のおかげで、過去を許してあげることが出来ました」

「そうか」

 束の間の沈黙の後に降ってきたのはたった一言だけだったけれど、その声は、子供をあやすようなとても優しい声だった。

「あの、一つだけ聞いてもいいですか?」

「何だ」

「課長は、どうして知っていたんですか? 私が、恋人とあのプラネタリウムに行く約束をしていたって」

 あの場所に着いた時から、ずっと気になっていた。どうしてこのことを、課長が知っていたのだろう。

「あー、それか」

 彼は軽く息を吐き、言葉を濁した。
 
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