お見合い相手は冷血上司!?
 外に出ると、緊張する私の心とは裏腹に、紫がかった春空がツヤツヤと眩しい。
 家を出てここまで、鉛の靴を履いているように足が重かったのは、この二泊三日分の荷物が詰まったスーツケースのせいではないだろう。

「荷物はこれだけか?」

「はい、ありがとうございます」

 バタン、と車のトランクを閉めた課長は、今日も助手席のドアを開けてくれる。
 この間のことを思い出してつい身体を強ばらせていると、『早く乗れ』と押し込まれてしまった。
 変更がなければ空港までバスで行く予定だったので、こんなにすぐまたこの車に乗ることになるとは思ってもみなかった。

 当たり前だが、車内は今日も課長の香りで充満していて、深呼吸しようとした空気を飲み込んだ。

「さぁ、行くか」

 静かなエンジン音がして、車は流れに沿って走り出す。
 これから約三日間……無事に過ごせるだろうか? 不安と緊張が入り交じり、私は持っていたトートバッグをギュッと抱え込んだ。
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