お見合い相手は冷血上司！？
「わぁ。やっぱり結構冷えますね」

　飛行機で約一時間半。空港を出ると、ひんやりとした風が頬を撫でた。
　美味しく感じる空気を胸いっぱいに吸い込み、改めて私たちの住む街との気候の違いに感動する。
　厚手のコートやマフラーを持ってきておいてよかった。

「北海道は初めてか？」

「はい。高校の修学旅行で来るはずだったんですけど、トラブルで変更に」

　確か飛行機がチャーター出来なくなって、前日に奈良県に変更になった。母方の祖父母の家が奈良県にあるので、知っている街を探索することになり、少しショックだったのを覚えている。

「それは、苦い思い出だな」

　彼は黒のコートにマフラーを鼻の下まで巻いているけれど、その少し細められた目に、口角は薄笑みを浮かべているのだと分かる。

「『ダズリン・アントワネット』本社まで」

　空港の出口に綺麗な列を作っていたタクシーに乗って、私たちは目的地へと向かった。
< 85 / 195 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop