浅葱色の記憶
しばらく男と見つめ合った


「これ鳴らすと出て来るのか?」

「ふっ たまたま聞こえた
だが、その鈴が聞こえる度、お前に会える」

「私を知ってる?」


男が目を開く


「その鈴、なんで持ってる」

「さあ?」

「俺があげたんだ」

「そう?ありがとう」

「何かあったのか?」

「何かあったといえばあったかな?
私、記憶がなくて
悪いけど、あなたの事も知らない」

鈴に視線を移した
ほんの一瞬

その隙に、男は私にキスをした

この感じ… 知ってる


「記憶がないなら…
さらってもいいよな?」


「私、前にもした?」


「ああ 何度かしてる」


「それって、どういう関係?」


「恋仲だ」


「恋する仲ってこと?」


「ああ 真結… 俺と一緒に来い」


「あなたの名前は?」


「…桂小五郎」


「長州の人でしょ!?新選組の敵じゃない!
私をエサにでもする気!?」


「俺は、真結に惚れている それだけだ…」


再びキスをしようとしてくる

私は、手を出し、止めた


「やめて!記憶がなくてもわかる!
私の恋仲は、あなたじゃない!嘘つくな!」


「新選組にそういう奴がいるのか?」


「ええ」


「そいつが、嘘をついてると考えないのか」


「言ったでしょ!?わかるの!!
記憶は、なくても覚えてるの!!
コレ、返す!」


鈴を返して、部屋に戻ろうとした


「真結!」

「なに?」

「幸せなのか?」

「わからない
でも、幸せになれる気がする」

「そうか 俺は、真結の味方だ
真結が幸せなら、それでいい」

「桂さん…ありがとう!」

「また会おう」

「そうね、また会いましょ」










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