浅葱色の記憶
近藤さんが、私の前に座り

「ここが嫌になったのかい?」


優しく声を掛けてくれた

嘘でもつけば、良いのかもしれない


だけど



「いえ、皆よくしてくれて
とっても大好きです
だからこそ!ここを離れないと!」



私の手を床からはがし

両手で包み、私を起こした


「サクタ君 ここにいてほしい
新選組の為に、君が我慢して出て行くことはないんだよ」


「え?」


「アホ 行くとこもないくせに」


「うっ」


「記憶は、あらへん
せやけど、昨日の話からすると
一度ここを出て、行くあてないとこを
俺に連れて帰られてんやろ?」


「なっ」



「んで、出て行こうと言うてんのは
俺らの記憶に関係あるんやろ!?」


「……」


返す言葉が見つからない
そんな私を
山崎さんがギロギロ見る

監察、恐るべし!!

「サクタ君、話してくれないかい?」


「話せることが見つからないんです」


情けない

ヘラッと笑うしかないんだもの


「何でもいいんだよ」


「ごめんなさい」


「サクタ君、なら私達が思い出す!
必ず、思い出すよ
だから、ここにいてくれないか?
君がとても大切な宝物に思えてね
どうしても手放したくないんだよ」


「ははっ… 
前にも新選組の宝だと言ってくれました」


「やはり!」


「ありがとうございます」





新選組の未来を考えたら
ここにいてはいけない

そう思うのに








引き留められて嬉しいなんて…





私のせいで


新選組の未来が変わるかもしれないのに








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