浅葱色の記憶
「そういうことなら、話が早い
サクタがここに帰りたいと思うように
協力してやろう」


「お前が…?」


「嫌なら貰うけど?」


「ダメダメ!!あげない!!」


総司が、まるで駄々っ子のように言う




ふっと笑った後
桂は、話を始めた


「最初にアイツに会ったのは島原だ
新選組の宴を抜け出し、中庭にいた
町で噂の新選組隊士をからかってやろうと
近づいて、すぐに女だとわかった
一目惚れした
アイツが腕を怪我したり
アイツが記憶をなくした時は
今なら… 俺のものに出来る
そう思ったが、駄目だった
偶然、町で見かけて声を掛けた
今度は、お前達の記憶が消えたんだって
とても、寂しそうだったが
新選組を離れなければと言っていた」


「だから、連れ去ったりしたのか?」


「ああ 記憶を取り戻すには
お前達の頭の中をアイツでいっぱいにすればいいかと思ったが
そんなに簡単ではないようだな」


「サクタ…どうしてる?」


藤堂君の質問に、桂が眉をひそめる




「元気にしてる…
お前達… もしかしたらと思ったが
名前… 誰も聞いてないのか?」





どれほどの沈黙の後だったか




「なんて名前なんだ?」



「どうせ、思い出すんだろ?
それまでくらい、俺に独り占めさせろ
……アイツは、記憶をなくしても
恋仲のことは、ちゃんと覚えている
そう言って俺をふった…どいつだ?」


桂が山南君を見つめた



「永倉君です」




「あ?俺じゃねえのか!?
やっぱり永倉かよ!!!」

「なんで、土方さんなわけないでしょ!?
山南さん!私ですよね!?」

「俺だろう」


と、歳 総司 斎藤君が言う



「だから、永倉君ですって」


「やっぱり」


永倉君は、合点がいったようだったが
喜びではなく、不安気な表情を浮かべた






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