浅葱色の記憶
「思い出せないのだ…
新選組で過ごした時間は、兎に角
楽しかったはずなのに
サクタ… 彼女の名がどうしても…
だから、直接会いたいと思ったのだが」


会津公も

近所の子供も

平隊士も

町の人々も



サクタを知っていても、名前を知らない




夜、約束通り、桂が来た



なんの結果も出せず、報告に戸惑う


「なにも情報なかったんだろ」


図星すぎて、苦笑いもでない


「実は… こちらも問題が…」


桂が視線を落とした


「アイツは、なんていうか…
まあ、女として、の前に
なんか人として魅力のある奴だろ」


回りくどい言い方に、歳がイライラするのが伝わってくる



「何が言いたい!?」


「勝手に部屋を出て、皆と仲良くなった」


「なんだ……そんなことか」


「そんな事じゃないだろう
今は、協力しあっているが元は敵!
お前らの敵になりたくないと
あんなに言っていたのに!
何やってんだ!!って…
喧嘩してしまった…」


「それで?」



「出て行くって、大荒れで
あんまり騒ぐから、眠らせた」



桂は、ため息漏らすと


「俺が、ここに来てることも
今から話すことも
仲間を裏切る行為だ
それでも、アイツは…アイツだけは
俺の特別なんだ!
でも、アイツの特別は…新選組で
俺じゃない…
長州の浪士らが、御所や守護職を襲う
そんな計画が進んでいる
アイツをこちらに置けなくなった
明日、帰そうと思う」



桂は、頼りなく笑うと



「どうせ、帰すんだ
自ら出て行かれるより
俺から手放した方が、格好つくだろ」



そんな、強がりも
桂を弱く見せた





「大切にするよ
私達が、サクタ君を守る!」



「ああ そうしてくれ
では、明日… 河原で鉢合わせしよう」




桂が、帰った後





「あいつ、良い奴だな」





歳が、ニヤリと笑った






「ああ… 
町でサクタ君を見つけた時、歳と総司
2人ともそんな楽しそうに笑ってたね」





「かっちゃん!!!」




「え?」












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