アンドロイド#01
スゥ‥滑らかに、その目は開いた。
「…あら、お目覚めかしら。」
白衣に身を包んだ女性が近付いてくる。
しかし、彼は身構えることもなく、近付いてくる女性をぼぅっと見つめた。
「気分はどう?」
『…ああ、悪くない。』
声も、いわゆる機械音というものではなく、本物の人間のようだ。
何よりこの顔立ち。
透き通った肌に人工毛とは思えぬ柔らかそうな銀色の髪、瞳は蒼く、スッと伸びた鼻、色っぽい唇。
細身の筋肉質に、足の長い長身。
誰もが目を奪われる外見である。
「私はシェリル。貴方を作った人間よ。」
『…よろしく博士。』
博士とは名乗っていないにも関わらず、素早い状況判断、順応性も高いようだ。
「ええ、よろしく。
貴方は#01、通称シャープよ。」
『シャープ…。』
「そう、シャープ。年齢は17歳。」
『それはプログラムされている。』
シャープと名付けられたアンドロイドは、ぶっきらぼうに言い放った。
というよりも、感情が込もっていないように聞こえる。
「…そうね、初期データは綿密にプログラミングしたし…。
貴方に無かったのは名前だけだったものね。」
『俺は災害用アンドロイド。
俺の任務は人を助けること。
俺に出来ないものは無い。』
そう言うと、シャープは体に繋がれていたチューブをブチブチブチッ…!と引き剥がした。
「ちょっ…シャープ…!」
『トラックと衝突してバスが炎上した。陣痛で動けない妊婦が取り残されている。』
それだけを言い残し、シャープは掛けてあった黒いジャケットを羽織ると、研究室を強靭なスピードで走り去ってしまった。
「…扱いづらいのはあの子並みね。」
フゥ、鼻から抜けた溜め息が、一人取り残された研究室で音を立てた。