私たちの、歪な関係
「うん……わかってたよ。」
駿くんはそう言って少し俯くと、パッといつもの調子に戻った顔で言った。
「なーんてね!優衣ちゃん大分落ち込んでたから心配しちゃってね!
隼も元気ないし、2人ともどうしたの?ってね!
でも、少しくらいアプローチはさせて欲しかったなぁ…」
………嘘、下手くそだなぁ。
でもきっと、駿くんは本当に心配してくれていたんだと思う。
「それに、隼と優衣ちゃんが付き合ってた本当の理由も知ってるしね」
「え!?」
駿くんの口からポロリと出た言葉に声を上げる。
し、知ってた?
「そりゃあね。ほら、ちょっと前に俺が隼のこと追いかけてた時あったでしょ?
その時にね、優衣ちゃんとの関係を聞いたんだよ。最近隼そわそわしてるから。
それで逃げられてたんだけど、この前俺と隼が教室で話した時も優衣ちゃん来たよね?
そのとき、教えてもらってたってわけ。
隼なかなか頑固で困ったよ。」
駿くんはそう言って話すけど、
……確かに、あれは不思議だった。
そうか…そうだったのか。
「ねぇ優衣ちゃん」
すると駿くんは突然真面目な顔をして言った。
「?」
「逃げないで」
………"逃げないで"
「隼とちゃんと向き合ってやって。
それでもダメな時は、俺がさらっちゃうよ?」
向き、合う………
駿くんの声がずっと頭にこだまして、しばらくそこから動けなかった。
気づいた頃には、駿くんはそこにいなくて私だけがぽつんと立っていた。