私たちの、歪な関係



ガタンゴトン……

帰りも揺れる電車の中で隼と隣。

車両は空いていて私たちの他に数人しか乗っていない。

「あ、そうだ優衣。これ」

隼が思い出したように声を上げ、私は不思議に思って隼をみた。


すると隼はポケットの中から少しくしゃっとした小さい紙袋をだした。

その紙袋には今日行った水族館のロゴが。

「記念に買ってきた」

隼から渡されたその袋の中を開けると、イルカのストラップだった。

可愛い…

それに自然とほほが緩む。

「ありがとう!
あのね、実は私もあるんだ」

私は先ほど隼に内緒で買ったものをカバンからだして渡す。

「え?」

私のそれも、隼のと同じ大きさの紙袋。

そして中身も、隼のと色違い。

「偶然だね!私も買ってたの!」

すごく偶然だけど、それがなんだか嬉しくて。


「ほんとだ…驚いた…」

隼本当にびっくりしてる。

私も驚いたよ。バレちゃったのかと思った。

「嬉しい、ありがとう」

「こちらこそ」

私たちはそのお揃いのイルカのストラップをお互い携帯につけることにした。


……思えば隼とはじめてのお揃い。

少し…いやだいぶ嬉しい。



「やった…」


携帯につけたそのストラップを夕日に照らすと、中に入っているラメがキラキラ光って綺麗。


ニヤケが止まらない。


多分私、今本当に気持ち悪い。


だけどきっと本当に幸せ。




こうやって、隼との思い出もたくさん増やしていきたい。





「ありがとう」



私が小さく呟いた言葉は、私にしか聞こえなかったみたい。





< 170 / 318 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop