私たちの、歪な関係
少し明るめの茶髪に校則違反のピアス。
だけどそんなことを堂々と出来るのはこの男くらいだ。
隼の幼なじみ、紫藤 駿-シドウ シュン-。
彼もまた、イケメンと呼ばれる部類。
まぁ、隼のがかっこいいと私は思うけど。
「俺も今日パンなの、いつもはおにぎりだけど」
……おにぎりもパンも購買だから大して変わらない気がするけど。
「そうなんだ!」
正直、苦手だ。
たまに笑顔が剥がれそうになる。
購買につくとたくさんの人で溢れていた。
「うわ、すごい人!」
こんなに人がいる所で隼はいつもパンを買ってるの?
大変だな……
「優衣、何食べるの?」
隼が私に聞く。
「うーん、どうしよう」
人が多すぎてパンが見えないから選びようがない。
「見えないから前行こ!」
隼の手を取り人混みの中へ入ろうとすると、隼はくいっと私の手を引っ張りそれを阻止した。
「?」
「人凄いからここで待ってな。
俺のオススメ買ってくる」
そしてそう言うと駿くんと一緒に人混みの中へ入っていってしまった。
「あ、ありがとー…」
びっくりした。
こんな事いつもしないのに。
私は大人しく2人を待つことにした。
「おっ、優衣ちゃんだ」
「お昼パンなの?」
「うん、そうだよー」
すると声をかけてきた2人組の運動部。
「1人?」
「隼待ってるんだー」
それに笑顔で返す。
「あ、これあげるよ。さっき間違えてりんご味買っちゃってさ」
「え、いいの?」
「もちろん」
「ありがとー!」
彼は私にりんごジュースをくれると隣にいた友達と行ってしまった。
ラッキー。
貰ったりんごジュースをなんとなく眺める。
いつも水筒のお茶だからなんか新鮮かも。
「優衣」
すると隼と駿くんが戻ってきた。
「隼っ、ごめんね。ありがとう」
「ううん、はいこれ。
メロンパン、ここの美味しいんだよ」
隼からお礼を言ってメロンパンを受け取る。
「あ、お金…」
「いいよ。買ったげる」
お財布からお金をだそうとすると隼は私の手を止め言った。
「え、嬉しい、ありがと!」
なんだか今日は運がいいのかな?
「あれ?優衣ちゃんそのジュースどうしたの?」
すると私のジュースに気がついたらしい駿くんが言った。
「ああ、さっきもらったんだー。
運動部の子がくれたの」
「へぇ、いいなぁ。かわいいと特だね」
なんて憎たらしい笑顔。
「あはは、そんなことないよ、たまたまだよ。」
そうして返していると、隼は私のジュースをひょいと取った。
「なぁに?隼飲みたいの?」
と聞くと隼は自分の持っていたぶどうジュースを私に渡し、りんごジュースを自分の袋にしまった。
「優衣はこっち」
もしかして、私が他の男子から何かもらったのがいやだったのか?
ほんと、今日の隼はなんだかおかしい。
「なんだそら」
笑ってそう言うと隼はなんだか照れくさそうに「行くよ」と言った。
「もー、2人とも独り身の俺が目の前にいるってのに!」
駿くんはそう言って騒いだ。