私たちの、歪な関係
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そして自由登校がついに始まった。
流石に花音もバイトを辞めて塾一筋。
駿くんも塾。
隼も勉強。
私も勉強と、それぞれが自分の道のために時間を使うようになった。
けど私は
「みんな勉強勉強……やんなっちゃう。」
自由登校開始たったの2日でこの有様。
今は自分の部屋で机に倒れ込むようにぺたりと頬を机につけて横たわっている。
もうセンター試験は目の前。なのになんでこんなに勉強に身が入らないの…
今は午後1時。お母さんは仕事だしみんな勉強してるし。
やる気が起きないよ……
ぼーっとそのままの姿勢でいると、家のチャイムが鳴った。
ピンポーン…
「?」
誰だろう…
私はとぼとぼと玄関へ行き、誰かも確認せずにドアを開けた。
「はーい…ってハルちゃん…」
「来ちゃった」
そこにいた人物は間違いなくハルちゃんで。
可愛らしく笑うハルちゃんをみて私は笑顔になる。
「どうしたの?学校は?」
「へ?今日土曜日よ」
「えっ、嘘…」
「お休みだからってぼけてるな~」
「うっ……」
そんな会話をしながらハルちゃんを家にあげる。
「みて優衣。昨日クッキー焼いたの」
そしてリビングのソファに座るとハルちゃんは持っていた紙袋からクッキーのたくさん入っ箱を出した。
「わぁ、ほんとだ!美味しそう!」
「そう?だと嬉しいんだけど…味見して欲しくて持ってきたの!」
そこにはとっても美味しそうなクッキーが。
けどひとつ問題がある。
確かに見た目は美味しそうなんだ、もう女子力!みたいな感じで。
だけど、ハルちゃんの料理、特にお菓子類は…
「いただきまーす」
「どうぞどうぞ!」
ガチッ……ボリボリ……
「どう?」
可愛らしく首をかしげて聞いてくるハルちゃん。
お世辞にも美味しいとは言えないかな…
という言葉をクッキーと共に飲み込んで。
「あいかわらずだー」
と笑って見せた。
「まずいのねっ……」
「あはは」
ハルちゃん…そんな所もかわいいよ…
「優衣おねがい!」
するとハルちゃんはそう言って私の顔の前で両手を合わせて、
「バレンタインまで、私にお菓子づくり教えて!」
と言った。
バレンタイン……
あ、そっか……
ハルちゃんは旦那様にあげるんだな。
「もちろん、喜んで。」
私はニコッと笑った。
「ありがとう!受験生の優衣に頼むのもどうかと思ったけど、私の周りでお菓子づくり1番上手なの優衣なの~!」
ハルちゃんはそう言って安心したようにわらうと自分のクッキーを1口かじり、「これはやばい」とボソリと呟いた。