雪の日 ~すれ違う心~
あの日、けんかなんかしなければ、雛子は部屋を出て行かなかった。


部屋を飛び出して……死ぬこともなかった。


そう思うと、とても正気でなんかいられなかった。


一日中部屋に閉じこもって、ずっと雛子に謝り続けた。


そんな俺を心配して、彼女は毎日俺の部屋をたずねてくれていた。


雛子が死んだのは突っ込んできたバイクのせいで、俺のせいではないんだと。


飽きることなく繰り返される言葉が、当時の俺には酷くうっとおしく思えて。


雛子を思い出すから、という理由で彼女を遠ざけた。


そんな理由を額面どおり受け取った彼女は、翌日から姿を見せなくなった。


彼女の姿が見えなくなってホッとした反面、なぜだかすごく心細くなって。


ぐちゃぐちゃな自分の思考がいやでしかたなくて、気がついたら手首を切っていた。





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