とりまきface
 遥人は菜々の姿を探した。


 菜々は、積み上がった製品の箱に手を乗せ顔を上げている。

 窓の外から朝の光が薄っすら差し、菜々の目から落ちた涙に反射した。

 菜々の顔はメークも落ち、ブラウスのあちらこちらに汚れもある。


 だけど、菜々の姿は綺麗だった……



 遥人はゆっくり菜々に近づいた。



「今日はありがとう…… すべて俺の責任だ……」

「私は当然の事をしただけです。発表会にどうしても間に合わせたかった。私が初めてかかわった企画だから……」

 菜々の振り向いた姿に遥人の胸が苦しくなった。


「いや、本当に桜井は頑張ってくれていた…… それなのに、俺は疑ってしまって…… 本当に悪かった……」

 遥人は頭を下げた。


 しかし、菜々表情は氷のように冷たく変わっていた。


「別に、何とも思っていませんから…… 部長が私をどう思うと関係ない事ですから」


 菜々は無表情のまま、遥人に背を向け歩きだした。


「お、おい」

 
 遥人が呼び止めるが、菜々は振り向くこと無く歩き去ってしまった。


 がっくりと肩を落とした遥人に、缶コーヒーが差し出された。
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