とりまきｆａｃｅ
　遥人は、自動販売機の前でコーヒーを飲む菜々の姿を見つけた。

　多分、亜美の事だけでなく仕事のストレスも溜まって冷静な判断が出来なかった。

　でも、それは言い訳だ……



　菜々の姿に、苛立ちがこみ上げてきた。

　とりまきの中でも一番と言ってもいい美人……　

　その上、自信に満ちた口調……　

　彼女の仕業と思い込んだのだ。


　「桜井！」

　遥人は思った以上の険しい声が出てしまった。


　青ざめた菜々の顔に、間違いないと思った。


「亜美に、嫌がらせするのは辞めろ！　これは命令だ！　だから女っていうのは……」


　自分でも驚く程の言葉をぶつけてしまった。


　一瞬で、菜々の表情が無くなり、しまったと思った時には遅かった……


「そんなに大切なら、部屋にでも閉じ込めておけばいいじゃないですか……　私は、部長にも亜美さんにも興味は無いわ」


　菜々の冷たい口調が返ってきた。


　そのまま、菜々は背を向けて離れて行った。


　遥人は、彼女を守ろうと思っただけだ……


　何も間違ってはいないと自分に言い聞かせるのだが、菜々の冷たい目が胸に刺さり、なんだかすっきりしない嫌悪感が残ってしまった。


　何故だろうか？

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