影ある君と
ざまぁみろ

━━上を見上げれば、ふらつきそうになるほど高いビル群。騒がしい車の音。行き交う人々。本当に気持ち悪い。

…家に帰って、寝て、そしたらまた明日が来るのか。

この大きな交差点で青信号を待つ度、いつも思うことだ。

そんなことを考えている時、少し先で聞き慣れた声が聴こえた。

「なぁー、どこ行く?」

「あたしぃ〜恵ん家行きたぁいなぁ〜」

「あはは、嫌だあ」

「なんでぇ〜?あたしはいや??」

あぁ、十律か。あいつ暴力的で自分勝手なくせにモテるもんな。むかつく。


それにしても、ちゃんと前みた方がいいのに。まだ、赤信号なんだけど──。ふと、十律と目が合った。え、ちょっと待て。目が合うとか以前に、おい、お前ら、前──。

キーーーーー。ドンっ──。

固いものが柔らかいものに、思いっきりぶつかったような、なんとも言えない音がした。

「きゃーー!!」
「おいっ!いま2人轢かれたぞ!」
「救急車!!」

騒がしい。

十律とあの女が大型トラックに轢かれた。
その状況だけは分かった。

トラックの下の地面から、血が這っていく。

死んだ?

こんなこと思ってはいけない、駄目なんだ。駄目なんだけどっ……

「ざまぁみろ」

知らないうちに俺はそう呟いていた。
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