副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
莉乃は慌ててエレベーターに乗り込み、溢れた涙をグイッと拭うと部屋へと駆け込んだ。
(うそ……。私……。誠が好きだ。好き……)
別れ際に感じてしまった、まだ一緒にいたい、そばにいて欲しい、もっと抱きしめて欲しい。
そんな自分自身の気持ちに莉乃は動揺していた。
(今まで一人で頑なに守ってきた自分の心の中にこんなに簡単に入りこまれるなんて。一番苦手なタイプだったはずなのに……。恋愛なんてもう2度としないって誓ったのに。でも……。誠に触れらることに嫌悪感を頂かない。それが一番の事実だよね……)
ズルズルとドアの下に座り込み、またあふれ出た涙を拭う事もせず両手で顔を覆った。
莉乃は気づいてしまった自分の気持ちをコントロールできず、どうしていいかわからなかった。
(男なんて信用しない。男なんて信用しちゃだめ。でも……)
ひとしきり泣いた後、莉乃はゆっくりと息を吐いた。