副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
「眠れないのか?」
誠の問いに莉乃は、苦笑をすると、少し瞳を曇らせた。

「眠れない……というか……」
莉乃はどう形容すべきか悩んで言葉を止めた。
「うん?」
誠はあくまで無理強いしないように、優しく莉乃を見た。

「ベッドに入ってすぐに眠れないと、悪い事が頭を支配して、恐怖や不安で眠れなくなって……寝てからも夢見も悪いから余計に眠るのが怖いのかな」

目を伏せ、呟くように莉乃は言葉を発すると、小さくため息をついた。

そんな莉乃を見て、誠は莉乃の手からコップをそっと取り、テーブルに置くと莉乃に微笑んだ。

「莉乃、俺でも一緒にいたら不安が減る?眠れる?」

「え?」
莉乃は誠の言葉の意味が解らず聞き返した。
「試してみて。ダメなら止めるから」

「ちょ……誠……?」
誠は立ち上がりブラインドを閉め少し暗くすると、クッションを枕にして横になった。

そして莉乃のを見上げると、そっと手を引っ張り自分の腕の中にそっと押し込めた。

誠に後ろから腕枕をされるような形になり、びっくりして振り返った莉乃に、
「イヤな事は何もしないから。目を閉じて」

誠は莉乃に言い聞かすように言った後、優しく微笑むと自分も目を閉じた。

莉乃はかなり早い自分の心臓の音を聞いたが、誠の鼓動と温かさ甘い香りが不安を取り除いていった。

そしてしばらくして、疲れと寝不足もあり意識を手放した。

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