副社長には内緒!〜 Secret Love 〜

(ん?)
やがてはっきりしてきた意識で莉乃は現状を把握した。

夢なんかではなく、まさに現実で、自ら誠に抱きつき今の状態にあることを思い出した。

(どうしよう?なんでこんなことに?あーどうしよう!!)

誠の腕の中でぐるぐると考えを巡らせていたが、心地よい誠の腕から出たくないそれが本心だった。


(誠にとってはたくさんいる女の中の一人でも、私にとっては嫌悪感を抱かないただ一人の人。もう、こんな人は現れないと思ってたけど、現れたことに感謝したい)


莉乃はそう思うと、意を決して腕の中から誠を見上げた。

誠もさっきまで揺らいでいた瞳が、まっすぐ確かなものに変わったことに驚きつつ、

「よく眠れたか?」

「うん。ありがとう」

誠は自分で抱きしめたのだと勘違いし、

「悪い!何もしないって言ったのに、俺、寝ぼけてたか?」

慌てて腕を緩めようとした誠に、莉乃は自分の手に力を込めた。


「……お願い。このままじゃダメ?」

「莉乃……」

「すごく、落ち着くの。誠に抱きしめられると」
羞恥で真っ赤になっているだろう自分の顔を隠すように、さらに誠の首筋に顔を埋めると、莉乃は素直に言葉を発した。

誠は大きく息を吐くと、観念したように、

「俺は全然いいんだけど。この体制、理性を保つのが必至なだけ」
ふざけたように言って、空気を和ませるように莉乃に笑いかけた。

自分自身どこまでの覚悟があって、この状態でいるのかわからなかったが、今はこの腕を離したくなかった。
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