副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
会議が終わり、誠は少し疲れた様子で副社長室に戻ってきた。
「お疲れ様です、副社長。下に車を用意しておりますので、15時までにはお戻りください。15時半からの、東条商事との商談資料は、私の方でご準備しておきます」
莉乃は淡々と、戻ってきた誠に告げると、驚いた表情の誠の瞳がそこにはあった。
「……わかった。シャワーと着替えだけしたらすぐ戻るから」
「ランチもきちんと取ってきてください」
誠のようなタイプには絶対関わらないと決めている莉乃だが、根は弱っている人や動物にめっぽう弱い。
ついつい、いろいろな世話や仕事を先回りしてやってしまった。
そして自分自身への言い訳を莉乃は探していた。
(今日だけ、今日だけ。あたしだって鬼じゃない。疲れてる人に無理はさせられない)
軽く誠は息を吐く音が莉乃の上から聞こえた。そして少し戸惑ったように、
「君も、きちんとランチは取るようにね」
「大丈夫です。ありがとうございます」
莉乃もその言葉に少し微笑んで答えていた。
微笑んだ莉乃に更に、誠は目を見開いた表情を見せたが、
「ありがとう。じゃあ、よろしく頼むね」と、副社長室を後にした。